口腔外科

歯科口腔外科と聞くとみなさん凄く怖い、切ったり縫ったりするの?
というイメージを持たれると思いますが、実際に口腔外科分野は、そういう治療ばかりではありません。
親知らずの手術以外にも、親知らずの痛みや、アゴがカクカクと音がするなどの症状がある方はぜひご相談下さい。
時間はかかると思われますが、ご一緒に治療を進めて行きましょう。


親知らずとは

大人の歯は、13歳前後までに全部(前歯から第二大臼歯まで、28本)生えます。ですが、それからかなり遅れて20歳前後に歯の列の一番奥に生えてくる歯があります。この歯のことを、「親知らず」、「第三大臼歯」あるいは「智歯(ちし)」と呼びます。
上アゴ、下アゴ、左右の計4本あります。 上アゴの親知らずは、上の歯の一番奥の歯茎とその外側に生えてきます。下アゴの親知らずは、下の歯の一番奥の歯茎と頬の粘膜の間に出てきます。


親知らずの語源

日本語:親知らずが生える頃には、子供は親元を離れるため、親が歯の生え始めを知ることはないということで、親知らずという名が付きました。
英語:親知らずのことを英語ではwisdom tooth(智歯)と言います。Wisdomとは、賢いとか分別という意味です。つまり、親知らずが、物事の分別がつく年頃になってから、生えてくる歯であることに由来します。
最近、日本人は顎の成長が昔に比べ劣ってきているといわれており、顎の骨が小さくなったのに、歯の大きさは変わらないので、 親知らずの萌出するスペースが減り、傾いて生えたり、全部生えきれずに歯茎がかぶっていたり、生えきれずに顎の骨の中に埋まったままになっていることが多いようです。
このように、親知らずの萌出状態に問題がある場合、歯磨きできれいに清掃することができずに汚れが蓄積し、 周囲の歯茎に炎症を引き起こします。これを智歯周囲炎といいます。また、親知らずが前に倒れている場合、前方へ押すため歯並びを悪くすることが考えられます。
このような場合、もしくはこのような可能性がある場合、親知らずの抜歯が適応になります。


親知らずは抜いたほうがいいの?

抜いた方がいいと勧められる主な理由は下記のとおりです。

1.歯ブラシが届きにくく虫歯になる
口の中の一番奥(手前から8番目)にあるため、歯ブラシが届きにくく、みがいているつもりでもどうしてもみがき残しが多くなり、 虫歯になってしまいます。親知らずにみがき残しがあると、手前の歯まで虫歯にしてしまうことがあります。


2.歯並び、噛み合わせを悪くする
歯並び、噛み合わせを悪くすることがある斜め、或いは横向きに生えてくること(顎の中に埋まっている場合も含む)が多いので、歯並びや噛み合わせが変わってしまう事もあります。
特に、下アゴの親知らずが横向きに生えてくると、前の歯を圧迫するためその力が前歯に集中し、前歯が重なってしまうことがあります。
また下の親知らずが横に飛び出てきたり、他の歯の高さより高く生えてしまったりすると、口を閉じた時、親知らずが上の歯と先に当たったりすることで、顎関節を痛めてしまうことがあります。


3.親知らず自体が炎症の原因となることがある
斜め、或いは横に倒れて生えていると、手前の歯との間に食物がつまることで、歯肉が腫れたり痛んだり、炎症を起こしてしまいます。 原因の親知らずを抜かない限りは炎症が繰り返えされます。炎症は時に重症化し、下アゴの激痛、顔面から側頭部にかけて放散痛が生じ食事も仕事も困難になることがあります。入院して治療する事もあります。
親知らずを抜いた方がいいと勧められる主な理由は上記のとおりですが、これらの理由が全くない場合はもちろん抜く必要はないでしょう。しかし残念ながら現在では全く問題のないケースのほうがまれです。
多くの人が親知らずに関して何らかの問題を抱えています。
特に、妊娠中や出産後の子育て中に親知らずの炎症を生じる女性が増えています。女性の方は、注意が必要です。



顎関節症

顎が開けにくい、痛みがある、カクカク鳴るなどの症状がある場合、これらを総称して顎関節症と呼びます。
これはいったいどのようにして起こるのでしょうか?
これには、まず顎間接と呼ばれる上顎と下顎の間にある間接の仕組みについて知る必要があります。
上顎の歯列と下顎の歯列は左右の耳の穴の少し下前方の部分で間接を介してつながっています。

この顎の間接(顎間接)には関節円板といういわばクッションのような組織が存在し、上下の顎の骨が直接こすれないような仕組みになっています。
口を開けるという動作には、上顎のくぼみに沿って丸い形をした下顎の骨(間接頭)が、このクッションを間に挟んだ形でスムーズに動くことが必要です。
顎が痛く口が開けにくい、口を開けるときにカクッと音がするといった症状の原因には、この関節円板というクッションの障害をはじめ、さまざまな原因が複雑に関係している場合が考えられます。


顎関節症の主な原因

「顎関節症」の原因はいろいろ考えられますが、ハッキリした原因が特定されてはいません。
通常は歯ぎしりや噛み合わせの不具合、入れ歯や金属冠の不良、顔面打撲などの外傷、睡眠時の不自然なうつ伏せ寝での持続的顎部圧迫や姿勢のゆがみによっても起こるとされています。
日常的に前かがみの姿勢で長時間作業をされるとか、強いストレスが掛かる生活環境やゆがんだままの姿勢による悪習慣が原因として挙げられる場合もあります。
関節の歪みや噛み合わせの悪いままの状態で、食事中に硬いものを噛もうとするとどうしても顎の関節に無理な力が働いてしまい、より大きな負担がかかります。
これは噛み合わせが悪いために顎の関節の動き自体が常に不安定な状態となり、無理にゆがんだままの不自然な動きをしてしまうために生じます。
悪い噛み合わせの原因は、現代人の軟食傾向による「顎の未発達」が指摘されていますが、顎の発達が不完全であれば、どうしても関節自体の「悪い噛み合わせ」が症状にも繋がってきます。
無理な力を加えながら不安定な咀嚼運動を食事の度に繰り返していると、顎の関節内に次第にズレが生じて「顎関節症」に移行してしまいます。
不快な症状を我慢して放置していると、多くの場合そのまま慢性化してしまいます。
「顎関節症」自体は単純な噛み合わせの矯正だけでは解消されないことがあります。
顎関節の咀嚼運動に連動して、より複雑な複合運動が関連しているからです。
その場合は顎関節だけに問題があるのではなく、他にも症状につながる身体的要因が隠れているということになります。
最近の傾向としては、自律神経に負担を掛けてしまう心因性のストレスも近年症状発生の引き金になりつつあることが一つの特徴として上げられています。
睡眠中や日常的に過度の噛みしめが顎関節部の過剰な負担を強いることになり、咀嚼運動に関連する筋肉の炎症や肩こり、さらには頭を支える頸の筋肉靱帯を痛めてしまう、いわゆる頚椎症によるものもあります。
特に若い女性や更年期前後の女性にもこうした顎関節症が増加傾向にあります。